不妊治療専門クリニックにおける栄養カウンセリングの実際

不妊治療専門クリニックにおける栄養カウンセリングの実際

【目的】

当院は2013年5月に開院し,2014年7月から当院の患者を対象とした栄養カウンセリングを希望制で無料で行っている。カウンセリングの担当は管理栄養士で,1回あたり50分を設定している。開始以来,相談件数が約400件となったが,今回は,その相談内容や来談回数などを分析することで,不妊治療を受ける患者のニーズや心理的不安などについて考察したい。

【方法】

2014年7月から2019年1月までに行った栄養カウンセリングのカウンセリングシートをもとに,年度ごとの相談件数,1人あたりの来談回数,同席者,相談内容などを分析し,カウンセリングを利用するタイミングや患者の食に対する意識や関心についてまとめた。

【結果】

2014年7月から2019年1月までの相談件数は,のべ395件で,来談者数は305人であった。1人あたりの来談回数は,1回のみが最も多くて263人,2回が28人,3回が7人,4回が2人,5回以降は人数は少なく,最高は19回であった。女性患者が1人で来談するケースがほとんどであるが,夫が同席するケースも19件あり,実母や義兄の同席も1件ずつあった。また,第2子を希望し,来談するケースが18件あった。

相談内容は多岐にわたる。主訴だけでなく,話題が広がるにつれて,質問内容もどんどん増えていくので,1回のカウンセリングでの相談内容は複数になる。それらすべてをカウントし,相談内容の傾向を調べた。

最も多いのは,「体重管理」に関する相談で,特に「減量」についての相談が多かった。次に多いのは,「生殖機能の向上に効果のある食事」で,ホルモン値の改善,採卵や胚移植の前の栄養管理,卵の質の向上,着床障害や流産を防ぐ食事などについての質問があった。インスリン抵抗性の検査の結果が悪く,その改善のために来談する人も多い。夫については,精子の質の改善,メタボリックシンドロームの改善のために食生活を見直したいとの相談が多かった。妊娠判定で陽性だと分かった後に,「妊娠中の食事」について聞きたいと来談するケースも見られる。また,「妊娠のために栄養面で気を付けることは何か」という食事全般についての質問,「サプリメントや漢方薬」についての質問も多かった。逆に,「妊娠のために避けた方がいい食べ物は何か」との質問もあり,飲酒,喫煙,カフェイン,トランス脂肪酸をはじめ,個々の食品についての害を尋ねる人もいた。また,貧血,便秘,冷えなどの身体症状,間食や偏食・少食のために栄養状態が悪いのではないかと不安を訴える人もいた。その他,料理が苦手なので工夫の仕方を教えてほしいという相談もあった。

また,健康診断の結果や食事記録などを自ら持参し,アドバイスを求める人もいた。

【考察】

来談のタイミングとしては,受診開始後の初期,夫の精液検査の後,採卵・胚移植の前,妊娠判定後など,治療段階の節目に当たる時期に多いと言える。治療が長期にわたるほど,不安感が増し,自分で簡単に取り組めることとして食に関心が向くようで,来談回数が多くなる傾向にある。インターネットで妊娠に関する食の情報を入手し,何が正しいのか分からず,途方に暮れて来談するケースも多く,情報化社会の弊害も感じられた。

これらのことから,不妊治療を受ける患者のニーズとしては,食や栄養に関する正しい情報の提供であると言える。特に,サプリメントについては,過大に評価し,それに頼り切る患者も見られ,年齢が上がるほどその傾向が強い。医療機関での栄養カウンセリングであるからこそ,エビデンスに基づいた情報提供を心がけ,患者の個別性に応じたアドバイスを行う必要がある。

また,来談回数が多い患者は,食や栄養について知りたいだけでなく,治療に行き詰まり,先の見えない不安感を抱え,誰かにその気持ちを受け止めてもらいたいと望んでいることが,カウンセリング中に何度も感じられた。食という身近で気軽な話題を通して,楽しく会話をすることで,少し心を休め,今後の治療にも前向きになれると語る患者もいた。

これからも,管理栄養士として,また不妊カウンセラーとして,患者のニーズや心理状態に目を向け,最良の支援を行っていきたい。

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