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ARTIFICIAL INSEMINATION
人工授精について
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人工授精とは?
人工授精とは、事前処理によって洗浄・濃縮した精子を子宮内に直接注入(子宮内人工授精;intrauterine insemination)し、卵子と精子が出会う確率を高める不妊治療法の一つです。子宮内に注入された精子は自力で卵管内へ移動し、排卵後に卵管内に取り込まれた卵子と自然に出会います。よって、名前には「人工」と冠しているものの、極めて自然妊娠に近い形の治療法と言えます。
タイミング療法で妊娠しなかったときの次のステップとして位置づけられています。
人工授精の適応条件
- タイミング療法を反復実施しても、妊娠に至らない場合
- 勃起障害や、(腟内)射精障害、あるいは性交障害(セックスレスを含む)がある場合
- 精子の運動性や濃度に問題がある場合
- 頸管因子(子宮頚部の狭窄や頸管粘液の減少など)が完全に否定できす、精子の通過障害が疑われる場合
- 抗精子抗体が中等度陽性である場合
- 精液量が少ない場合
- 不妊原因が不明な場合
いずれの場合も、卵管通過障害(卵管狭窄・閉塞)がないことが前提となります。
人工授精のメリット
- 比較的容易にできる治療法であり、ある程度の妊娠率を確保できるので繰り返し治療しやすい
- スピーディーに行え、ほとんど痛みのない治療である
- 身体への負担が少ない
- 費用がそれほど高価ではないため、何回もトライできる
排卵誘発法との連動
排卵誘発を行うことで、卵巣ホルモン濃度が上昇し、子宮内膜の肥厚や、排卵後のホルモン濃度上昇など、着床しやすい環境整備も同時に行うことができます。世界的にも、排卵誘発を使用しない人工授精の1回あたりの成功率(8~10%)よりも、排卵誘発剤を併用した人工授精の方で妊娠率が有意に上昇(13~16%)することが知られています。当院では、妊娠率の向上を目的に、排卵誘発剤を積極的に使用した人工授精を行うようにしています。
人工授精のステップ
-
タイミング療法と同様、
排卵の時期を調べます超音波検査、あるいは血液検査を併用して排卵の時期を予測します。
人工授精は、排卵日前日、または当日に行います。 -
精液の採取
基本的にはご自宅で自己採取(採精)を行っていただきます。(遠方にお住まいの方のみ、クリニックでの採精が可能です。)可能であれば採取から2時間以内、遅くとも3時間以内に持参していただきたいと思います。
-
精液の調整
精液をそのまま子宮腔内に注入することはありません。通常、精子を濃縮し、成熟した運動性の良好な精子を回収するために遠心分離し、精子洗浄培養液で洗浄します。この作業で精液に混じった細菌や赤血球や白血球も取り除くことができます。
-
人工授精
前述の方法で処理した精液0.3mlを細くやわらかいチューブに入れ、子宮の内腔に注入します。注入に要する時間は1~2分間です。ほとんどの方には、痛みなどの苦痛はありません。当院では、可能な限り超音波ガイド下で子宮内に精液が正確に注入されるのを観察しながら、実施しています。実施後の日常生活は全く普通で問題ありません。
人工授精の副作用・合併症
副作用に関しては万全を尽くし、まれにしか発生しませんが、下記のようなことも可能性があるということで記載しておきます。
出血
カテーテル挿入の刺激で人工授精後少量の出血を認めることがあります。
感染
まれに子宮や卵管、腹腔内に感染を誘発することがあります。
当院では予防的に人工受精後、2日間の経口抗生剤の投与を行っています。
多胎妊娠
排卵誘発剤を使った過排卵刺激法を併用した場合、妊娠率は上昇しますが、双胎などの多胎が発生することがときにあります。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
多量に排卵誘発剤(特に注射剤)を使用した場合は、予想以上に多数の卵胞が発育することがあり、
卵巣が腫れたり腹水がたまったりする卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が発生することがあります。この状態は妊娠によって悪化するため、
治療をキャンセルする必要があります。当院で特に力を入れている「低用量漸増法(少量の注射を毎日自己注射する方法)」であれば、
OHSS発症リスクを最小限にすることが可能です。
院長からの一言
タイミング療法でなかなか結果が出ないご夫婦に対しては、人工授精へのステップアップを我々はお勧めしています。たとえ精液所見に問題がないようなご夫婦でも、頸管因子が完全に否定できない場合は、人工授精の効果は十分に期待できると思います。ただし、人工授精の前には、卵管通過障害がないことを確認しておくことも重要です。
長期間にわたり、タイミング療法を継続されている方は、子宮卵管造影検査を受けてから、ぜひ人工授精にステップアップしてみましょう。ちなみに、人工授精で治療を受けられる期間については、人工授精で妊娠された方の多くが、4回以内であることから、
- 年齢が若く、卵巣年齢も大丈夫な方で半年間(6回程度)
- 35歳以上または卵巣年齢が軽度~中等度低下している方で4回程度
- 40歳以上、または高度に卵巣機能が低下している方は2回程度
をひとつの目安にされるとよいと思います。
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