男性不妊の原因と種類・検査

男性不妊とは

定期的な性交渉を持ち避妊していないにもかかわらず1年以上妊娠成立しないカップルで、主たる原因が男性側にあることとされます。男性不妊は主に精子の問題とされていますが、ここでは性交障害や勃起不全の性機能障害といった男性因子を含んで男性不妊として説明します。

 

不妊症全体における男性因子の頻度

挙児を希望するカップルの15%が1年以内に挙児を得ていないとされています。不妊カップルの男女の不妊の要因は図1に示すように明らかな男性因子が24%、女性因子が41%、男性・女性ともに原因がある割合は24%であるとの報告がWHOの調査結果として出ています。すなわち不妊カップルの約50%は男性側にも原因があるということになります。

不妊症の原因

男性不妊の種類とその頻度

男性不妊の種類はおおきく分けて2つです。造精機能障害や精路通過障害による精子異常(精子量、精子数、精子運動率などの異常)と、性機能障害(射精や勃起障害)です。

その頻度は1998年の旧厚生省の調査結果によれば造精機能障害が83%を占め、精路通過障害13.7%、射精障害、勃起障害が3.3%と続きます。造精機能障害とは生まれつき、またはそれ以外の原因で精子の形成が損なわれる状態で、その56%が原因不明とされています。原因の最も大きな要素は36%の要因となる精巣静脈瘤という睾丸(精巣)への血流異常が指摘されています。

精路通過障害とは精子は形成されていますが、精子の通り道である精巣上体、精管の閉塞で精液中に精子が含まれない状態です。精巣静脈瘤や精路通過障害に対しては泌尿器科の診断の元に手術療法が行われる場合があります。

勃起不全(erectile dysfunction:以下、ED)は性交タイミングの75%で性交が行えない状態と定義されています。2002年の報告では完全EDと中等度EDを合計すると980万人が該当し、その有病率は年齢に伴い増加します。2007年の報告では不妊症患者の中でEDが原因として関与する率は28.9%とするものもあります。

 

精液検査について(正常値指標)

男性不妊の主要な検査に精液検査が挙げられます。2010年WHOマニュアルによる精液検査各項目の正常下限値を下記にお示しします。

(※WHOの基準ではクルーガー染色による基準を示していますが、当院では迅速な診断のためマクラー精子分析カウントチャンバーにて精子の頭部、頸部、尾部に異常があるものを形態異常とし、形態異常精子の割合を奇形率と記載し40%以下を正常基準値として提示しています。)

 

当院では禁欲期間を2-3日として精液検査を行い、上記の項目で精子異常の有無を診断しています。禁欲期間を2-7日とする見解もありますが、射精後3日で精子数は十分に回復すると考えられています。期間が短すぎると精液量が少なくなることがあり、また3日以上の禁欲では、死滅精子を増やし運動率の低下を認めることがあります。

検査に際しては、自宅またはクリニックで精液を自己採取(採精)していただきます。

自宅採精の場合では、可能であれば2時間以内、遅くとも3時間以内に精液を持参して頂くよう当院では指導しています。自宅採精時の精液の搬送方法に関しては、冷やすことだけではなく温め過ぎにも注意が必要です。精子の質を保つ温度として32~34℃程度が最も良いとされていて、反対に39℃以上ではダメージを与えてしまう可能性が示唆されています。当院では検査の説明時にお渡しする保温バックに精液採取カップのみを入れて持参頂いています。

治療方針は、この精液検査の値を元に判断していきます。異常値を認めても検査当日の体調による影響も考えられるため、その後1か月以内に2回目の検査を行い総合的に診断しています。

 

男性不妊の予防法

造精機能に悪影響を及ぼす生活習慣としては、精巣内温度の上昇、喫煙、肥満などが挙げられます。まず精巣内温度の上昇を抑えるために、サウナなど高温の環境を極力避ける事や下着はトランクス型を着用するなどが挙げられます。また長時間自転車に乗る、ノートパソコンを膝の上で長時間使用するなどの習慣も注意が必要です。

次に、喫煙および肥満への対策は非常に重要と我々は考えています。特に喫煙に関してはアメリカ生殖医学会が2012年にオフィシャルコメントを出しており、男性も女性も生殖機能を低下させることが示されています。同様に肥満に関しても男女とも不妊症との関連を示唆する報告が増えており、男性においてはbody mass index(BMI)25以上、とりわけ30以上で精液所見が悪化することが示唆されています。対策としては、当然ながら喫煙者には禁煙を、肥満の方には運動やカロリー制限が求められます。

最後に男性への投薬に関する注意点ですが、一部の抗うつ剤や、育毛剤などが造精機能に悪影響を及ぼすことあるとされており、使用する際、あるいは使用中の方は担当医に確認が必要です。

 

男性不妊の治療法

最初に造精機能障害に対する対策としては、精液所見の改善を目指す泌尿器科的な治療と、直接妊娠を目指してご夫婦に実施していく不妊治療が挙げられます。

まず精液所見の改善の為に投薬や手術(精巣静脈瘤など手術治療が効果的な疾患)が行われます。男性不妊全体の約半数を占める原因不明の特発性患者に対しては薬物療法が選択される場合があります。漢方やサプリメント、一部のホルモン剤などが有効な場合がありますが、必ずしも改善効果があるとは限りません。

不妊治療専門施設では、造精機能障害に起因する不妊症に対しては、人工授精あるいは顕微授精が行われます。この場合は精液所見の改善を待たなくても即座に治療が可能です。

また性機能障害のEDに対しては、薬物療法、カウンセリング、人工授精等の治療法が選択されます。

 

男性不妊に対する不妊治療

1)人工授精

採取された精子を調整し、柔らかいチューブを用い直接子宮腔内に注入する治療法です。精子調整では成熟した運動性の良好な精子を回収するために遠心分離し、精子洗浄培養液で洗浄していきます。体外受精と異なり経済的で、外来で比較的簡便に実施できるため、精液所見によっては第一選択の治療法になります。(詳しくはこちらをご参照下さい)

造精機能障害の他に、性交障害、免疫性不妊(女性の抗精子抗体が中等度以下陽性の場合)、タイミング療法で妊娠に至りにくい場合などにも行われます。ただし、重度の造精機能障害があり、人工授精での妊娠が困難と判断されれば後述する治療が推奨されます。

 

2)顕微授精

顕微授精は卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection:以下、ICSI)とも呼ばれる受精方法で、顕微鏡下に裸化した成熟卵子の細胞質内に不動化した精子1匹を顕微鏡下に注入します。正常受精率は約80%と報告されていますが、卵子の活性化が十分でない場合などでは受精しない事もあります。

受精障害がある場合、あるいは重度の造精機能障害があって、一般体外受精(媒精)では、受精が期待できない場合に選択されます。

 

3)精巣内精子回収法(いわゆるTESE)

精液内に精子が認められない無精子症例は、造精機能障害の非閉塞性と精路通過障害の閉塞性の二つに分類されます。無精子症と診断された場合には、非閉塞性および閉塞性を問わず、不妊治療専門の泌尿器科にて手術治療が必要となります。

非閉塞性無精子症には、麻酔下に精巣を切開して精巣から直接精子を採取する精巣内精子回収法(testicular sperm extraction:以下、TESE)が実施されていて、最近ではより侵襲が少なく精子採取率が高い顕微鏡下での精巣内精子回収法(micro-TESE)が行われています。

閉塞性無精子症では、精子の通り道の精巣上体を切開する精巣上体精子回収法(microsurgical epididymal sperm aspiration:MESA)が選択されていましたが、手術痕の癒着で再切開が困難になるリスクから非閉塞性と同様にTESEが推奨されています。

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